「流れるままに生きています」
朝岡がおどけ気味にそう語るのは、一つには大学・大学院で研究テーマとしていた「空力音(風切音)」、すなわち流体力学にかけている節がある。そして、もう一つは在学中、空力音の騒音問題を解決するための研究を、三協立山アルミと共同で行っていたという経緯も含まれている。つまり、学生時代から技術開発部とつながりがあり、その流れに沿って現在に至っているということだ。
「大学進学の際、機械系と建築系で迷いましたが、地元大学の工学部に決め機械を専攻しました。空気とか風とか、目に見えないものに興味があったので流体力学の研究室に所属。そこで、たまたま建築系の研究をやっていて、学部4年次から三協立山アルミとの空力音の共同研究に参加していたのです」
高層ビルの屋外階段などを目隠しするための外装ルーバー、特殊な意匠でファサードに突出したフィンや外装材表面の凹凸などにより、「ヒューヒュー」と笛が鳴るような風騒音が発生する場合がある。これが空力音と呼ばれる現象だ。その発生メカニズムを、風洞実験やコンピュータ・シミュレーションによって解明することが、共同研究の目的だった。
「私が所属していた研究室の教授は学会でも有名で、厳しい方でしたので結構鍛えられました。おかげで、研究者に必要な打たれ強さというか、失敗に終わっても諦めず一つひとつコツコツと積み重ねていく姿勢が培われたと思います」
朝岡の今に続く研究人生は、目に見えない風とともに、風のように始まっていたようだ。 |