大型ビルから戸建て住宅まで、各種の建築物に
多様な内外装資材を供給している三協立山アルミ。
膨大な数に上る商品群の背景には、それを支える技術開発力がある。

根っからの研究者肌を自認する朝岡は、
一つひとつの製品の性能を突き詰める実験に、
あるいはシミュレーション解析に、日々没頭している。
「わからないこと」を「新しいもの」につなげるために――。
朝岡
2008年入社 理工学教育部機械知能システム工学専攻修了
三協立山(株)三協アルミ社
技術部 商品技術課
朝岡幸康
2008年4月
三協立山アルミ入社
技術開発部 機能技術課配属

大学在学中から三協立山アルミとの共同研究に携わる。
「流れるままに生きています」
朝岡がおどけ気味にそう語るのは、一つには大学・大学院で研究テーマとしていた「空力音(風切音)」、すなわち流体力学にかけている節がある。そして、もう一つは在学中、空力音の騒音問題を解決するための研究を、三協立山アルミと共同で行っていたという経緯も含まれている。つまり、学生時代から技術開発部とつながりがあり、その流れに沿って現在に至っているということだ。
「大学進学の際、機械系と建築系で迷いましたが、地元大学の工学部に決め機械を専攻しました。空気とか風とか、目に見えないものに興味があったので流体力学の研究室に所属。そこで、たまたま建築系の研究をやっていて、学部4年次から三協立山アルミとの空力音の共同研究に参加していたのです」
高層ビルの屋外階段などを目隠しするための外装ルーバー、特殊な意匠でファサードに突出したフィンや外装材表面の凹凸などにより、「ヒューヒュー」と笛が鳴るような風騒音が発生する場合がある。これが空力音と呼ばれる現象だ。その発生メカニズムを、風洞実験やコンピュータ・シミュレーションによって解明することが、共同研究の目的だった。
「私が所属していた研究室の教授は学会でも有名で、厳しい方でしたので結構鍛えられました。おかげで、研究者に必要な打たれ強さというか、失敗に終わっても諦めず一つひとつコツコツと積み重ねていく姿勢が培われたと思います」
朝岡の今に続く研究人生は、目に見えない風とともに、風のように始まっていたようだ。

自社の財産となる技術資料を一つひとつアウトプットしていく仕事。
機能技術課の環境グループ(熱、通風、省エネ担当)における朝岡の仕事を端的に表現してしまえば、「実験・実測とコンピュータ・シミュレーション」という一言に集約される。
「基本的に、大学の研究室でやっていたような感じです。具体的なテーマとしては、住宅の省エネ評価ツールをある大学と―母校ではありませんが―共同開発したり、住宅の通風解析を行ったり、結露シミュレーションをしたり、いろいろですね」
技術開発部には、営業や商品開発など社内の各部門から、さまざまな問い合わせや依頼が舞い込んでくる。例えば、上記の「省エネ評価ツール」や「通風解析」は、自社商品の性能をアピールする販促材料としてアウトプットが求められたものだ。「結露シミュレーション」の結果は、建築業者と物件の打ち合わせをする際に不可欠な資料となる。冒頭に紹介した空力音の共同研究は、ユーザーの苦情を解決するためのものだった。それぞれ、当初の目的に限らず、商品開発シーンなどにおいても有用な技術資料となる。
「私たちがやっている研究自体は、客観的な事実・科学的な資料として当社の財産になっていくもの。目的の後先はケース・バイ・ケースで、それらの研究成果をどう使うかですね。どこにでも、いろいろ使えると思います」
朝岡は時々、すごいことをさらりと言ってのける。それは、「わからないこと」にとことん向き合い解明する研究者、科学者だからこその性向なのかもしれない。

初めて担当した「通風解析」のCG画像がパンフレットに掲載される。
先の話題にも上った「通風解析」は、朝岡が入社してから1年が過ぎた頃に任された案件だ。彼にとって初めて形になった仕事として、とても印象深いという。
「営業部門から『商品性能を訴求するために、住宅内を風がどのように流れるか定量化・可視化してお客様に見せられないか』という話が来て、シミュレーションに取りかかりました」
まず、シミュレーション・ソフトの説明書を読み、時にはサポートに電話で問い合わせながら住宅一棟を作り上げた。言うまでもなく、パソコン上の話。既存のCAD図面からシミュレーション用のモデルを作成する下準備だ。あとは、いくつものパターンで風向きや風速などの条件を入力して演算を走らせる。そのアウトプットである通風の様子を可視化したCG画像を営業スタッフに見せたところ、「これいいね!」ということになり、販促用パンフレットに掲載されたという。
朝岡の研究成果が、まさに初めて形になった瞬間である。彼にパンフレットを見た時の心境を尋ねると「出た、という感じでした」との淡々と味気ない返答。訊いたこちらが拍子抜けしてしまうが、どうやら照れが勝っている様子。本心ではうれしかったに違いない。
「解析は大学時代からずっとやってきましたし『通風』もその延長線上にありますが、流体だけというのはおもしろくない。今は一つのことを突き詰めたい気持ちと、いろいろなことをやりたい思いの両方があります」
彼自身の方向性を打ち出す解析は、目下のところ複雑な演算の真っ最中といったところか。

自分の専門テーマを見出し、「○○のことなら朝岡に」といわれるように。
大学の研究室と同じようなことをやっているという朝岡だが、もちろん違いもある。
「研究生時代と一番大きく違うのは、研究の作業効率を意識し、先の工程を考えた計画や作業を心がけている点ですね。学生の頃は効率なんて考えもしませんでしたが(笑)、就職してからは一つの実験をするにも段取りよくやるように努めています」
彼の研究者としての好奇心・探究心は変わらないどころか、ますます旺盛のようだ。産学連携の一環として母校の大学が開講している社会人向け講座「インダストリアルエンジニアコース」を受講したり、富山県で開催された日本建築学会大会で「住宅の熱性能設計ツール QPEXの開発」と題した発表を行うなど、多方面に顔を出し学術活動にも余念がない。
「大学との共同研究もそうですが、常に学びながら働ける環境がありがたいですし、この仕事のおもしろさ、やりがいだと感じています」
勉強嫌いの向きには信じられない発言だが、「研究開発職以外は考えられなかった」という朝岡ならではの一家言である。
「機能技術課の先輩たちは、みなさん専門テーマを持って活躍されています。私も、現在担当しているいくつかのテーマの中から、あるいはそれ以外のものかもしれませんが、『これだ!』というものを見つけたいですね。そして、『○○のことなら朝岡に聞け』というふうになるのが理想です」
就職活動中のみなさんへ
自分自身の大学時代を振り返ると研究室にいる時間が長く、一定のコミュニティの中だけで活動していました。 三協立山アルミとの共同研究をはじめ、勉強以外にもバスケットボールなどをしていたとはいえ、外部との接点は限られていたように思います。 就職して社会に出ると、仕事上で関わる人間が多くなります。私の経験談ですが、最初の頃はちょっと戸惑いを感じたりもしました。 学生の頃から、もっと幅広い人たちと交流しておけばよかったと、今になって思っています。 どんな仕事でもコミュニケーション能力は大事ですから、さまざまな人たちと積極的に関わることをおすすめします。 機能技術課は気軽に質問・相談のできる雰囲気の職場で、楽しくやりがいを持って働ける仕事です。一緒に解析をやってくれる後輩を大歓迎します。
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