就職活動を前に、熹ィはこれまでの人生で一番感動したことについて考えた。真っ先に浮かんだのは、中学生の時に新築した「わが家」の思い出だ。
「あの時は本当にうれしかったです。家族にとって家とは、幸せの象徴ではないでしょうか。このような想いがあったので、人を幸せにするための空間づくりに携わりたいと思い立ちました」
その後、就職活動を進めて三協立山に入社してからも、この志は大切な指標となっている。
長野支店がある長野県は一般的に北から、北信、中信、南信と3つのエリアで区分されている。現在、住宅建材課に所属する熹ィは、その中で中・南信エリアの代理店へのルート営業を任されている。
広大な担当エリア同様、取り扱う商品のラインナップも幅広い。メインとなる住宅関連のサッシと玄関に加え、エクステリアやインテリアなど豊富な商品知識が求められる。そして、信頼関係を築いてきた代理店とタッグを組んで、建築などを担う工務店に商品を売り込むことが仕事だ。
受注後、商品を納入する前の着工式や住宅完成後の引き渡し式に出席する場合もある。式中、あいさつをする施主の中には、この日を迎えた感動から涙する者も少なくない。その姿を見るたびに気持ちがあらたになるという。
「この日のために頑張ってきてよかった」
喜びや希望の中にいる家族の存在が次の「幸せ」へ向かうためのエネルギーとなっているのである。
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